インパナ塾
IMPANNA SCHOOL
(公財)尾州ファッションデザインセンターでは、繊維産業人材育成事業の一つとして、「尾州インパナ塾」を開講しています。
関連する大学、あいち産業科学技術総合センター尾張繊維技術センター、FDC 匠ネットワーク等と連携を図り、産地の将来を担う人材の育成を目指しています。
紡績・撚糸、企画・製織、染色・仕上からなる繊維工学、ファッション・デザイン工学、マーケティングの座学、実習、工場見学に加え、
卒業制作としての試作開発実習を実施します。

尾州インパナ塾試作開発作品
IMPANNA SCHOOL PROTOTYPE
試作開発実習の概要
OVERVIEW OF PROTOTYPE DEVELOPMENT TRAINING
猛暑や豪雨、クマ被害に象徴される自然環境の変化、そして物価高に追いつかない生活水準など、私たちを取り巻く社会環境は不安定さを増しています。そうした時代の中で今、「自分らしさ」や「心の豊かさ」を大切にしたいという新たな消費意識が生まれています。
このような状況を背景に、今年の『インパナ塾』では、「尾州ならではの華やかさ」・「サステナビリティ(持続可能性)」・「エシックス(倫理)」を備えたファンシーヤーンを用いたツイードによるガーメントを企画し、装いを通して新たな価値と前向きな変化を社会にもたらす“きっかけ”となることを目指しました。
3つのグループが独自の視点からコンセプトを構築し、明るい未来を見据え、尾州から”新たな価値の核となるもの” を発信すべく、私たちは新規テキスタイルとガーメントを創出しました。
「これから何かが始まる」、この時代の転換点になることを願い、制作に取り組みました。
A.River Benefits
全国屈指の清流・木曽川の恩恵によって発展してきた尾州産地。その存在の尊さを、どのように未来へ伝えていくべきか。
私たちは、木曽川そのものを“神”として生地に宿すことをテーマに制作しました。青・水色・紺色・ターコイズブルーの4色を基調に、深緑・緑・青緑・銀色、さらにラメ糸を組み合わせ、平織を中心としたドビー柄で織りあげました。
尾州の歴史は「創意工夫の歴史」であると私たちは捉えていて、その精神を反映し、着る人自身が着こなしを工夫できるよう、腰ベルトと袖ベルトを取り入れて可変的な仕様にしました。生地は、軽量化を図り歩くたびにファンシーツイードの輝きが揺らめくように企画をしましたので、その表情は、まるで自ら光を放ちながら流れる木曽川を身にまとうかのような佇まいを持ったジェンダーレスなコートとして仕上げました。
B.Thank sea tweed(残糸ファンシーツイード)
限りある資源を次世代へとつなぐ「循環」をテーマに、海をモチーフとして創作しました。絶えず水を巡らせ、生命を育む海の営みと同様に、ものづくりも無駄のない循環であってほしい、そんな想いを込めています。SDGsやリサイクルの視点より、各工場に眠っていた在庫糸から8種類の糸を選別しました。柄は海面の揺らぎから着想を得て、春夏らしさを引き立てるため裏糸には綿を採用し、ブルーやサックスを基調に配色しました。さらに、海のきらめきやリゾート感を表現するため、選別したスパンコールやラメ入り意匠糸を用いて、カットジャカードで編みあげています。20〜40代の女性をターゲットに、春夏のリゾートシーンに映えるガーメントとして企画し、ドレープ感を重視したシルエットにより、アームスリットやスカート部分に生まれる柔らかな揺らぎが軽やかで涼しげな印象を演出しています。
C.尾州の稲穂
「尾州の稲作」「夕日に照らされ輝く水田」「自然」「和」という4つのキーワードから、尾州の原風景ともいえる田園の情景を織物として表現しました。2/60の金ラメ巻き糸に、1/14の三ツ杢糸(カーキ=緑の苗、自然色・薄グレー=雨と水、レンガ=夕日)を組み合わせて柄を表現ました。「菱形」と「十字」の柄で、絣の伝統的な和柄を使用しつつも不均一な変化をつけ固すぎずモダンでルーズさを、そして「花柄」で自然と開花を表現しました。グランド部分には金巻き糸とモカベージュTOP糸のシェットランドウールを用いて、カットジャカード織で織りあげています。豊かな実りをもたらす稲穂の姿を『つなぎ』として上下一体の造形に落とし込み、「つながり」を象徴的に表現し、フードを取り入れることで、一体感のあるシルエットの中にささやかな変化を加え、現代的な印象へと昇華させました。
ジェンダーフリーをテーマに、性別にとらわれず、着用者一人ひとりの個性と快適さを尊重し、伝統的モチーフである稲穂と、現代的な価値観を融合させた、過去と未来をつなぐ一着です。
-
グループA
GroupA
-
グループB
GroupB
-
グループC
GroupC
グループA
GroupA
| コンセプト | 全国屈指の軟水と言われる木曽川の恩恵を受けている尾州産地。今もう一度川に感謝しその豊かさを身にまとい、後世に伝える。 |
|---|---|
| ターゲット層 | 30代~80代 |
| 番手 | たて:2/48(4色) よこ:1/48×1/48×ポリウレタン (3色) 1/8.3 (ラメリング) |
| 生地データ | 密度 たて:220本/10cm よこ:180本/10cm 目付 220g/m² |
| 混用率 | ウール79% ポリエステル16% ナイロン4% ポリウレタン1% |
| GROUP | 指導匠 水谷 仁 受講生 新井 達也(国島(株)) 数川 真尋((株)ソトー) 長坂 麻未(大成毛織(株)) 内藤 真理 |
生地制作意図
全国屈指の清流・木曽川。その軟水の恩恵を受けて発展してきた尾州産地において、私たちはあらためて木曽川に感謝しその豊かさを「身にまとう」ことで後世へ伝えていきたいと考えました。木曽川の大切さをどのように表現すべきかを模索する中で、私たちは川を神格化するという発想に至りました。
古来より日本には、あらゆるものに神が宿るとするアミニズムの思想があります。その考え方を生地づくりに重ね、木曽川そのものを“神”として表現することを目指しました。木曽川は、まるで川自らが意思を持ち、光を放っているかのように水面をきらめかせます。その自然の輝きをいかに生地に落とし込むかを、グループ全員で探究しました。
たて糸には青・水色・紺色・ターコイズブルーの4色に染めた2/48ウール糸を、よこ糸には深緑・緑・青緑・銀の各色に染めた「1/48×1/48×PU交撚糸」と「ラメ糸」を使用して、平織をベースとしたドビー柄で織り上げました。最終工程ではクリヤー仕上げによる整理加工を施しています。
製品制作意図
真清田神社境内の服織神社には女性の神様が祀られている一方、川の神は古来より男性とされてきました。川の恩恵によって発展してきた尾州産地だからこそ、この対比から着想を得て、ジェンダーレスなコートとしてガーメントをデザインしました。
また、尾州の歴史は「創意工夫の歴史」であると私たちは捉えています。その精神を反映し、着る人自身が着こなしを工夫できるよう、腰ベルトと袖ベルトを取り入れて可変的な仕様としました。
生地は軽量化を図り、歩くたびにファンシーツイードの輝きが揺らめくように企画をしましたので、その表情は、水の流れと呼応するかのように、自ら光を放ちながら流れる木曽川の姿を想起させます。
まるで川そのものを身にまとうかのようなシルエットを目指した一着です。
試験結果
C法 たて ‐1.0% よこ 2.5%
H-2法 たて -1.0% よこ 0.5%
伸縮回復率JIS-L-1096B-1法 伸長率 ‐18.5%
伸長回復率30秒後 64.5% 一時間後 77.6%
グループB
GroupB
| コンセプト | 残糸(在庫糸)を使用したリサイクル素材で、海の水面や春夏のリゾートシーンをカットジャガードで表現。 |
|---|---|
| ターゲット層 | 20代~40代の女性 |
| 番手 |
1/5 ナイロンスラリットヤーン 1/7.4 綿・レーヨンジーンズ生地の再生ネップ糸 1/11.6 紙・ナイロン・和紙絣リング糸 1/4 ウール・ナイロン・モヘアタム絣糸(スパンコール入り) 1/15 ナイロンラメ・リリヤーンラメ巻き(2色) 2/10×130キリ・再生ウール・ポリエステルラメ巻き (裏糸)30/2綿糸 |
| 生地データ | 密度 ウェール:93本/10cm コース:90本/10cm 目付 297g/m² |
| 混用率 | 綿50% ウール・ポリエステル・ナイロン・和紙50% |
| GROUP | 指導匠 川村 康文 受講生 佐原 里沙((株)ソトー) TIMSINA ANUP((株)ソトー) 西岡 征太郎((株)伴野撚糸) 中嶋 すみれ 中村 萌季(ササキセルム(株)) |
生地制作意図
限りある資源を次の世代へとつなぐ「循環」を生み出したい。その想いから、海をモチーフにしました。海が絶え間なく水を巡らせ、生命を支え続けるように、私たちのものづくりも無駄のない循環でありたいと考えています。使用されずに眠っていた在庫糸に新たな役割を与えることは、資源循環を促し、持続可能な社会の実現につながる取り組みです。SDGsやリサイクルの視点から、ニット工場・織布工場・意匠撚糸工場に残されていた在庫糸の中から、形状・色味の異なるものを8種類選定しました。これらを組み合わせ、表情豊かなファンシーツイードニットに仕上げています。
柄は海面の揺らぎから着想を得ています。春夏らしさを表現するため裏糸には綿を用い、色調はブルーやサックスを基調に構成しました。さらに、海のきらめきやリゾートの空気感を表現するため、スパンコールやラメ入り意匠糸を用いました。カットジャカードで編み上げた後、軽く整理加工を施し、チーム全員で飛び糸をカットして、海らしい表情へと仕上げました。
製品制作意図
20代〜40代の女性を対象とし、海の水面や春夏のリゾートシーンをイメージしたリゾートガーメントを目指しました。春夏らしい軽やかさと、優美なドレープ感を意識したデザインが特徴です。アームスリットやスカート部分に生まれる自然なドレープがリゾートらしい佇まいを演出し、涼やかで軽快な春夏向けアイテムとして仕上げています。
試験結果
JIS L 1930 洗濯C4H 吊(C型基準洗濯機使用)
ウェール -5.0% コース -3.5%
JIS 1096プレスH-2法
ウェール -0.5% コース -1.0%
グループC
GroupC
| コンセプト | 尾州の稲作・夕日の中で光る水田・自然・和、上下が一体となる「つなぎ」は、稲穂の束のようなつながりを象徴。伝統と現代性の調和を表現。 |
|---|---|
| ターゲット層 | 20代〜30代 |
| 番手 | たて:3/61.5 (2/60×1/75 S320 金ラメ巻) よこ:ベース糸 1/28 (シェットランドウール) カット糸 3/14 (三色・三ツ杢糸) |
| 生地データ | 密度 たて:228本/10cm よこ:276本/10cm 目付 296g/m² |
| 混用率 | ウール86% ポリエステル10% ナイロン4% |
| GROUP |
指導匠 岩田 善之 受講生 井山 楓(日本毛織(株)) 園田 祐晟((株)ソトー) 堀尾 拓也(木曽川染絨(株)) 横井 悠乃(御幸毛織(株)) |
生地制作意図
「尾州の稲作」「夕日の中で光る水田」「自然」「和」という4つのキーワードを軸に、尾州の原風景ともいえる田園風景を織物で表現することを試みました。
たて糸には2/60の金ラメ巻き糸を使用し、よこ糸には、1/14の3色の糸(カーキ(緑の苗)、自然色・薄グレー(雨と水)、レンガ(夕日))にそれぞれの情景をイメージとして込め、三ツ杢糸にしています。
「菱形」と「十字」の柄は、絣の伝統的な和柄を使用しつつも不均一な変化をつけ固すぎずモダンでルーズにし、「花柄」は自然と開花を表現し、柄以外の糸をあえて飛ばし、織り上げ後にその飛んだ糸をカットすることで、柄に立体感を持たせました。グランド部分には、たて糸に金巻き糸、よこ糸に張りとふくらみのある1/28シェットランドウールのモカベージュTOP糸を使用し、金色の稲穂が淡い土色の上にやわらかく浮かび上がるように企画しました。これらの素材と構造により、カットジャカード織で織り上げ、ガーメント作成後に湯通しを施して仕上げました。
製品制作意図
一本一本が集まり、束となって豊かな実りをもたらす稲穂の姿に着想を得て、服の形を『つなぎ』とし、上下を一体化させることで「つながり」を造形的に表現し、全体がひとつにまとまる、象徴的なシルエットにしています。さらに「つながり」の一体感を強調するため、ディテールとしてフードを加え、統一感の中にわずかな変化を取り入れることで、現代的な印象へと昇華させました。
ジェンダーフリーをテーマに、肩幅やウエストラインを過度に強調せず、誰もが自然に身にまとうことのできるように企画し、着用者の個性を尊重しながら快適さを追求しています。稲穂という伝統的なモチーフと、ジェンダーフリーという現代的な価値観を融合させ、過去と未来をつなぐ服として完成させました。地域文化への敬意と、新しい時代へのまなざしを併せ持つ一着です。
試験結果
プレス寸法変化率(JIS L 1096 H-2法)
たて 0.6% よこ -0.2%









